移転工法の各種ツールとしてのCG利用について

概要

以下は、平成14年12月4日5日に開催された「福岡補償実務研究会12月研修講習」で発表された事例のテキストである。
弊社で実験的に行われたCG利用例について、松崎マネージャーがまとめた。

アバウト

レポート製作者:松崎
レポート製作日:平成14年11月
レポートの表題:移転計画の検討ツール、及び説明ツールとしてのCG利用について

はじめに

道路拡幅などの事業で敷地の一部が取得等の対象となっても、現行機能を構内(残地)において回復するために再配置の検討を行う=いわゆる「移転工法」や「移転計画」の検討において、通常配置図等の平面(二次元)で計画決定を行っている現状であるが、従来と同じ平面的な検討に加え移転後の計画をCG(コンピュータグラフィック)で作成しその効果を検証してみた。
CG自体は新しい技術ではないが、関係者が移転を前提に考えた場合、移転後はどうなるかという不安に対し、また空間としてとらえた時移転後にどういう配置や高さになるのかということを鳥瞰的にとらえるため、移転計画の検討・計画案の作成においてCGを取り入れてみた。
現在のところ業務内容の中にそのような三次元的成果は求められていない。しかし、今後の動向を踏まえて移転計画の検討に三次元の視点を盛り込んで考察したものである。

CG(Computer Graphics)

CGの歴史は意外と古く約40年もの歴史がある。そのようななかで当社がCG制作を始めたのは、7年前からであるが初めのころは設計業務の完成イメージを得るために作成していた。
当社が取り組みだしたころは、まだまだ高価な代物(ハード及びソフトとそれらから生成されるコンテンツも含めて)であり、業務の付加価値としては考えにくいことであったが最近はその環境も一変し、取り組み方によっては安価に作成することが可能となった。
一般的にCGの利用目的としては、
  1.検討ツールとして(技術的・景観的・機能的)
  2.説明ツールとして(アカウンタビリティ・納得を得る)
  3.広報、宣伝として
といったところであり、今回は「検討ツール」と「説明ツール」で活用する目的とした。

移転計画の検討にCGを用いる効果

今回調査した案件の工事概要は、4mの市道を約10mに拡幅する工事であり、道路沿いにある鉄工所の事務所の一部が起業地となり、移転を余儀なくされる状況である。
当初現地を踏査した時、事務所が支障となるのは1〜2mであったので事務所前面に平行移動する曳家工法が妥当であると思われた。しかし、調査時の関係者の方への聞き取りによって、30t超のトレーラー(幅2.5m 長さ16.5m)が事務所の前をとおり奥の駐車場で転回し方向を変換した後、工場等にバックで進入するという実態を聞き取り、トレーラーが転回するスペースと通行に支障をきたさない条件が必要となった。結果として、現在駐車場として利用されている西側の土地に曳家工法により移転する計画案とした。
通常は敷地使用の実態や移転計画の検討をする際、車両等は軌跡図を作成し、車両運行上の検討を行っている。この場合、平面上での必要なスペースは確保できても、空間の利用のされ方や周りとの調和や景観という点までは解りにくい。そこで今回CGにより三次元的に状況を再現し、移転後にどんな空間が得られるのか、周りと建物の景観はどのようになるのかといった視覚的な検討を行った。また、鉄工所ということで当方の想定外の資材や車両、またそれらの動線が考えられるため、移転後の配置計画を関係者の方にも分かり易く検証してもらう目的と、その前段の担当者の方との協議資料を作成する目的であったが、両者から好評を頂き十分検討する材料にもなったと思う。
移転計画の検討にCGを用いる効果としては、まずもって誰でも“解りやすい”ということであり、人の目でみたものと同じ感覚のものをみることができればより計画イメージが湧き、さらにいろんな発想を繰り広げることができる。 解りやすいがゆえに、担当者や関係者からいろんな要求があるかもしれない。 しかし、「いかにスムーズな交渉を実現するか」という公共事業を円滑に推進するための本来のテーマを考えるべきで、そのためのCGの活用でありITの活用である。 公共事業を行う上での関係者へのアカウンタビリティ(説明責任)という点においても寄与するものと確信している。


移転計画の検討にCGを用いたときの長所と短所をまとめる。
長所 移転後の計画について視覚的に解りやすい。
空間としてとらえることにより、イメージが湧く。
コミュニケーションツールとなり議論が活発化される。
短所 計画をリアルに表現するため、関係者のもつイメージと差がでる。
費用がかさむ。

費用対効果

実際に移転計画をCGで作成した工程と工数は以下のとおりである。


種別細別職種工数(日)
モデリング建物(移転対象)技師C1.0
建物(対象外)技師C0.5
敷地技師C0.2
植樹・フェンス他技師C0.3
マッピングテクスチャマッピング技師C0.5
照明その他の設定技師C0.2
アニメーション軌跡設定技師C0.2
レンダリング(PC)1.0
平面パースペクティブトレーラー軌跡検討技師B0.5
出力・調整技師C0.2

工数については、地形や配置状況の複雑さ等が直接モデリングの工数にかかってくるため、その難易度により大きく左右される。
また、効果については前に述べたとおり、移転後の空間や建物の景観を視覚的にとらえることができたことと、担当者・関係者双方に移転の計画案について深く理解していただいたことである。

おわりに

公共事業を取り巻く環境が大きく変化するなか、このような取り組みを行っていくためには、更なるコストダウンとスピード化が必要である。そのためには、CG制作を外部に委託するのではなく、補償の技術をもった者がCGの作成に関わることでコストの低減化をはからなければならない。
また、今後の課題としては
  ・フォトモンタージュの利用によるローコスト化
  ・図面作成CADとCG制作ソフトとの連動
  ・発注機関との協議の場でのCGの更なる活用といったことがあげられる。
今後、今以上に専門の知識を習得すると同時に、用地業務を広く見渡し、迫り来る課題に対して、幅広い視野をもって業務に取り組むことが必要である。